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インタビュー動物病院
東京都板橋区坂下の動物病院

「爪切りだけでもいいですよ」— 板橋・アーツ動物クリニックに聞く、かかりつけの入口の作り方

取材日: 2026年8月18日 / 取材・文: 動物病院ナビ編集部

引っ越し先で動物病院を探すとき、多くの飼い主さんは「何かあったとき」を思い浮かべます。ところが実際に最初の一歩でつまずくのは、何かある前のほうかもしれません。爪が伸びてきた、体重が増えた気がする。その程度で病院の扉を押していいものか、判断がつかないからです。

東京都板橋区坂下のアーツ動物クリニックは、2010年4月に開院した犬と猫の動物病院です。国道17号に面した白いタイル張りの建物に、オレンジ色の看板が出ています。院長に、初めての飼い主さんをどう迎えているのかを伺いました。

前面道路。左手のオレンジ色の看板がアーツ動物クリニック

「近くの病院を探していて、というパターンが一番多い」

アーツ動物クリニック院長
アーツ動物クリニック 院長
獣医師・動物病院 運営
アーツ動物クリニックは2010年4月に板橋区坂下で開院。公式サイトの院長紹介には、院長は北海道出身、明治大学・酪農学園大学獣医学部卒と記載されている。

まず、どんな飼い主さんが最初の一歩を踏み出しているのかから尋ねました。

——初めていらっしゃる方には、どういう特徴がありますか?

基本的に、近所に住んでいる方がほとんどです。駅からはちょっと遠いというのもあるので、自転車や車で来られる方も多いです。最近多いのは、この辺りに新しく住宅やマンションがどんどん建ち始めているので、引っ越してきて近くの病院を探していて、というパターンですね。それが一番多いですかね。

——町が新しくなっている最中なんですね。ほかの動物病院との違いというと、どういうところでしょうか?

近くにすごく大きな病院があるのは、ご存じですか。CTも完備している動物総合医療センターです。そこに行くまでもないかな、やはりまずは一次診療でちょっと見てもらいたいな、という感じの方が多いように思います。

一次診療は、ふだんのかかりつけとして行う診察のことです。二次診療は、そこからの紹介を受けて専門的な検査や手術を担う段階を指します。

引っ越してきた人が近所で探し、規模の大きい施設へ行くほどではない段階を引き受ける。この病院がどこに立っているかが、最初の二問で見えてきました。

タイル壁とオレンジ色の看板が目印。都営三田線 志村三丁目駅・蓮根駅から徒歩10分(公式サイトのアクセス案内)

「怒ることはないけれど、最後にチクッとは言います」

動物病院に行くのをためらう理由として、取材でよく聞くのが「叱られそう」という感覚です。誤飲をさせてしまった、気づくのが遅れた。そういうとき飼い主さんは、自分が責められる場面を先に想像します。

——初めて行くとき、怒られそうで怖い、とおっしゃる飼い主さんが多いんです。何かを飲み込ませてしまったときなんかは、絶対に怒られるわ、と。そこはどう感じていらっしゃいますか?

怒るということはないですけれど、やはり動物のためには二度とやってほしくはないので、最後にチクッとは言いますね。基本的に、みなさんわざわざやっているわけではないことは十分承知しているので、そこを責めても仕方のないことですから、注意を促す意味ですね。

——心配なことがあれば、ためらわずに来てください、と。

そうです、そうです。早急に処置した方がいい場合もあるので。

責めても仕方がない、という言い方でした。責めたところで目の前の動物のためにならない、という考え方です。

——飼い主さんとの向き合い方で、意識されていることはありますか?

気をつけているところは、とりあえず飼い主さんにいろいろ喋ってもらいたいので、話しやすい雰囲気を作ることですね。質問形式というか、いつもの様子とどこがどう違うのかなどをどんどん話していただいて、その内容からいろいろなところを拾って、疑われる病気を探って必要な検査や治療を考えていこうかな、という感じで。まずは話を聞くというところを意識しています。

飼い主さんの話を聞く、という言葉が出てきました。いつも一緒にいる飼い主さんの話から手がかりを拾う。前の章の「責めない」も、同じ考え方から来ています。

受付・待合室は入り口を入って左手の引き戸の奥にある

「極力、最初の負担がないように」

話を聞く姿勢は、来院してからだけの話ではありませんでした。予約の入口から、負担を減らす手が打たれています。

——初めての方の予約は、電話とネット、どちらが多いんですか?

初診の方はネットの受付をやっていないので、やはり電話でのお問い合わせが一番多いですかね。みなさんホームページを見てだったと思います。再診の方のネット予約は休診日や診療時間外でも、空き状況を見て予約できるのでとても好評です。

——電話で、これは受診が必要でしょうか、といった相談もできるのでしょうか?

結構お聞きしますよ、電話で。早急に来る必要はないですよ、という方も中にはいらっしゃるのでね。わざわざ無理をして来ていただいて、動物にも人にも負担がかかるといけませんから、ちょっと選別できるように、よくお話は聞くようにしています。

大丈夫そうであれば「家で様子をみてください」と伝える。集客の面からは逆を向いた対応ですが、まず、動物と飼い主さんに負担をかけないことを優先しています。

——引っ越してきてかかりつけを探す方だと、健康診断だけ、体重を測るだけ、という来院もあると思うんです。そういうファーストステップは軽くされているんでしょうか?

そうですね、爪切りだけできますか、体重だけ測ってもらえますかと言われれば、特に診察料はいただかないで、それはやっています。身体検査や何か処置が入る場合はいただきます。

——最初の一回が、ずいぶん軽くなりますね。

極力、最初の来院のハードルが高くないように。ただ、爪切りだけでもカルテは作らなければいけないんですけれど、そういった作成料金はいただかずにやっています。普段から気軽に来院している方が、いざ病気で来院した時の動物と飼い主さんの緊張も和らぐし、元気な時との違いもこちらで把握しやすいというメリットもあります。

爪切りだけの来院でもカルテは作ります。手間は増えるのに、そのぶんの料金は取らない。最初の一回を軽くするために、病院側が手間を引き受ける形になっています。

——入り口を入って正面のフリースペースは、どういう意図で作られたんですか?

もともと最初に作ったのは、散歩の途中で寄っていただいたり、雨の日の運動場として使っていただいたり、あとはしつけ教室のような、いろいろな催し物ができるように、ということでやっています。今はちょっとそんなに動いていませんが、一時期は、先生がいたときにしつけ教室を定期的にやったりしていました。あとは大きなワンちゃんとか、待合室で他の犬や猫に吠えてしまうワンちゃんがいたら、興奮をおさめるためにもこちらに入って待ってもらいます。猫ちゃんがいる場合は、怖がらせてしまうのであちらでお待ちください、と。そういったことにも利用できるようにしていますね。

入り口を入って正面がフリースペース。「ご自由にお入りください」と掲示されている

——ペットホテルもされていますよね。入院の部屋とは別なんでしょうか?

入院が優先になるので、入院で使っていない部屋があった場合にはお預かりしますよ、というスタンスで。入院と違ってホテルは部屋の広さなどの規制があり、狭いケージで預かることができないのです。部屋を繋げて広くして預かるので、1日に犬・猫を1頭ずつ同時に預かれる数くらいですね。

——それが限界ということですね。

ペットホテルはメインではないので、あくまで普段診察で来ている飼い主さんが、帰省や病気で入院などの理由で、短期間の利用を希望されたときに預かる為のお部屋という感じですね。

かかりつけ医ならではの答え方でした。同時に預かれるのは犬一頭と猫一頭ぐらい。旅行の予定が決まったら、まず空きを確認しておくほうがよさそうです。

——トリミングは、いま休止中なのでしょうか?

そうですね。トリマーが産休中です。が、月に数日復帰始めます。

公式サイトでも2026年3月19日付で、トリマーの休職にともないトリミング・シャンプーの受付を当面休止すると告知されています。爪切り・耳掃除・肛門腺しぼりなどの日常ケアは、引き続き行うと書かれています。

フリースペースの中。ベンチが置かれ、待合室とは別の部屋になっている

「調べてきてもらうことは、いい面と悪い面があるんですよ」

この病院は、置いている物についても同じ考え方をしていました。種類を増やして売る方向へは行っていません。

——フードやサプリメントは、どういう考えで選んでいらっしゃるんですか?

基本的には、動物病院でしか買えないものを置くようにしています。例えば量販店とかで売っているようなものは、絶対にそちらのほうが安いし、種類もいっぱいあるので。なので、ここでは獣医師の処方がないと買えない療法食を中心に置いています。サプリメントも薬の補助的なものや薬の効果をさらに上げるものなどを、それぞれに合ったものを獣医師の目線で取り扱いお勧めしています。

量販店と動物病院、という線の引き方です。取り扱う種類の多さではなく、動物病院でしか手に入らないものに寄せています。

最後に、取材した編集部がもともとAIの仕事をしていることから、いま診察室で起きている変化について伺いました。

——今はAIで自分なりに診断をしてから来られる方もいらっしゃいます。それで受診が遅れてしまったり、決めつけになっていたり、ということもあると思うんです。先生としては、どう思われていますか?

AIの回答を参考にすることは悪くはありません。ただし100%信じて自己診断することが心配ですね。同じ症状でも原因によっては検査方法や治療が全く違うこともあります。AIの診断をそれで決めつけている部分を、説得するというか、納得してもらうために使う時間は、確かにもったいないですよね。中にはぴったりね、AIが正解というのももちろんあるので、うまく利用できるようになるといいですね。

——初診の問診は、紙に書いていただく形ではないんですね。

もちろん簡単な症状やワクチン履歴などは紙に書いてもらいます。

問診票を重視する病院は少なくありません。この病院が話を聞くことを大切にしているのは、章の前半にあった「話しやすい雰囲気をつくる」と同じ理由に見えます。問診票に「風邪」と書いた時点で、飼い主さんの見立てのほうが先に固まってしまう危険があります。

——では、まずは来てお話してください、ということですね。

そうですね。言葉を話せない動物の代わりに「水を飲む量が増えた」「足をよく舐めている」など飼い主さんしか気付かないことをヒントとして教えてほしいです。

院内には、動物病院で扱っているフードやケア用品が並ぶ
📝 取材後記

電話で「家で様子をみてください」と言う。爪切りだけの来院に診察料を取らない。ペットホテルで預かれるのは犬一頭と猫一頭ぐらいだと先に言う。どれも、病院側の取り分を増やす方向とは逆を向いた答えでした。共通しているのは、かかりつけとして身近な存在でいようとしている点です。診察室で「話しやすい雰囲気をつくる」という姿勢も、同じところから来ています。引っ越してきてかかりつけを探している人にとっては、最初の一回を試しやすい病院だと思います。

アーツ動物クリニック

所在地東京都板橋区坂下1-27-11
電話03-6454-9066
診療時間月〜金 9:00〜12:00/16:00〜19:00、土 9:00〜13:00(要予約)、祝日 9:00〜12:00(要予約)
休診日日曜日
予約診察・手術・シャンプー・トリミング・ホテルは予約制。ネット受付は再診のみで、初診は電話
アクセス都営三田線 志村三丁目駅・蓮根駅から徒歩10分
駐車場あり
開院2010年4月
併設サービスペットホテル(犬・猫。動物取扱業 25東京保第002852号)/フリースペース。トリミング・シャンプーは2026年3月19日告知のとおり当面受付休止中で、爪切り・耳掃除・肛門腺しぼりなどの日常ケアは継続
時間外できるだけ対応。診療時間外は当院かかりつけの動物に限る(公式サイトの記載)
写真外観・待合室・フリースペース・院内はいずれも2026年8月18日の取材時に撮影した動画から抜き出したもの
公式サイトアーツ動物クリニック