犬や猫を迎えて、最初のワクチンをお願いする。引っ越した先で、これから通う病院を探す。そんな出会いを、診る側はどのように受け止めているのでしょうか。
東京都新宿区北新宿のエンドー動物病院の開院は1969年(公式サイト)。院長にお話を伺うと、最初から任された動物の健康に責任を感じる、という言葉が返ってきました。日々の相談から、専門医への紹介、最期の場面での判断まで、ホームドクターとして大切にしていることを伺いました。
「動物園の飼育係くらいだったんです」
——もともと、獣医師を目指されたきっかけはあったんですか?
きっかけは、子供の頃から動物が好きだったので、動物関係の仕事に進みたいと思っていたんです。ただ、子供の頃に描いていたのは、動物園の飼育係くらいだったんですね。
——いつぐらいから獣医師になろうと思われたんですか?
獣医になろうと思ったのは、高校生くらいですね。そろそろ大学を考える頃になってからです。
——この名前の病院自体は、院長が1代目ということですよね。
最初は、ある先生の分院を任される形でスタートしたんですけど、それが昭和43年です。それで昭和44年から、自分でやるようになりました。
昭和44年は1969年で、公式サイトが開院年としている年と重なります。取材でお会いしたのは、その最初の年から診療を続けてきた院長ご本人でした。
——場所は、転々と移られたんですよね。
ここに来たのは、向かい側からすぐ移ってきたんです。前にやっていたところが木造だったので、大きな地震が来たら危ないなという感じを、あの地震のときに感じたんです。鉄骨の建物なら安全だろうということで、こちらに移りました。
「苦痛とか不安を、できるだけ感じさせないように」
——診療方針について、改めて教えていただけますか。
診療方針は、やはり苦痛をできるだけ与えないことですね。治療にしても手術にしても、苦痛とか不安をできるだけ感じさせないようなことを、一番念頭に置いてやっています。
——手術もされるなかで、専門的な診療をするところと、町のお医者さんとしての立ち位置は、どのように考えていらっしゃいますか?
昔は今みたいに、専門的な診療をするところは大学病院くらいしかなかったんですよ。だから全部自分たちでやらなくちゃならないので、グループで勉強したりしないといけないような環境でした。一通り何でもやってきましたけど、今は専門にやられている先生がいるのでね。ちょっと難しいものは、専門医のところに紹介するようにしています。その分、気が楽になりました。
「一通り何でもやってきた」という50年以上と、「難しいものは紹介する」という現在が、同じ話のなかで続けて出てきます。自分で診る範囲を決めているというより、専門の先生がいる今の環境に合わせて役割を選び直した、という話し方でした。

「その子の生涯の健康について、責任を持たされた」
——引っ越してきてかかりつけ医を探している方や、飼い始めたばかりの方は、どんなきっかけで動物病院に来るとよいでしょうか?
きっかけはね、やはりかかりつけ医に、いい先生を探したいからということで。引っ越してきた場合でも、ワクチンだけ最初にうちに来て相談してもらうとか、それはもう大歓迎ですね。
それから、飼い始めたときですね。ですから、途中からいらっしゃる方も大勢いるんですけど、最初の避妊手術からここでするとなると、責任を持たされたという感じを受けるんですよ。自分が、その子の生涯の健康について責任を持たされたという、そういうなんとなくの心理状態になるんですね。最初のワクチンもそうですね。
——最初から、というのは特別な感じなんですね。
あちこち転々と行く人もいるんですけど、そういう方は逆に、こちらとしては気楽に、必要なことだけやってあげればいいなと思うんです。ただ、最初のワクチンから避妊手術から、みんなこちらに頼っていらっしゃる方の場合は、全責任をこちらで感じて、それに対応しなくちゃいけないという意識でやっていますね。
同じ診療でも、いつから任されたかで背負うものが変わる、という話でした。飼い主の側からすると、最初の一回をどこにお願いするかは、その後ずっと相談できる相手を決めることでもあるのだと感じました。
——動物病院には、体重を量りに来てくださいね、健康診断に来てくださいねという、とにかく通ってほしいというところと、逆に、病院は健康なときに来るものじゃないよというところと、両方ある気がします。どうお考えですか?
今は皆さん大事にされているのでね。自分だったら、例えば下痢したって病院なんか行かないだろうと思うような状況でも、飼い主さんにはその下痢が悪いものかどうか分からないから、やっぱり不安になってくる。一回吐いただけでも来るとかね。様子を見てからでいいのにな、と思うような場合もあります。でも、それは飼い主さんの心理として仕方のないことなので、心配なことがあったら何でも相談してもらいたいという、そういう形にしています。専門家の感覚で、こちらが答えるということですね。
——お電話で相談されることもあると思いますが、まずは来てくださいという感じなのでしょうか?
電話だけで済ませてしまう場合もあります。心配ないでしょうから、とかね。人の食べ物を食べちゃったとか、そういう全然心配のいらないようなものでも、分からない方がいるんですよ。大丈夫だから様子を見てください、こうなったら電話ください、という形で、電話だけで済ませているケースはよくありますね。
それは本当に、たくさんそういうのを見てますからね。だいたい話を聞いただけで見当がつきます。
「それによって、時間の取り方が変わってきます」
——初めての方が来られたとき、予約方法はお電話ですか?
電話ですね。
——電話以外もあるんですか?
直接来ちゃう人もいるんですよね。予約してないんですけど、と言って来ちゃうと。時間があれば診ますけど、やっぱりその間に入れてしまったために、その後が全部狂ってしまうこともあります。電話で出直してもらう場合もあります。
——ネット予約は使われていない、ということですね?
ないですね。勝手に機械的に入れられちゃうとダメなんですよ。この人は時間がかかるかもわからないとか、それによって時間の取り方が変わってきますからね。
予約枠を機械に任せない理由として院長が挙げたのは、一頭ごとに必要な時間が違うことでした。前の動物に時間がかかれば次が押す。その調整を、電話を受ける時点でしているということだと受け取りました。
来院前の電話予約は、公式サイトでも案内されています。緊急の場合も、受け入れ準備のため事前の電話が必要とされています。

——予約は、今日や明日でも取れるものなんですか。
時間が空いていれば、そうです。
「助けるのが仕事ですからね」
——高齢のワンちゃんや猫ちゃんの診療も増えてきたと思います。そういう老犬や老猫のなかで、意識されていることはありますか?
だいたい老犬というと、もう17年、18年とかね、それくらいになるんですね。みんな長生きするようになってきています。そうすると、横になったきりで立てなくなってしまって、床ずれができてしまいます。最初にどうしたらいいか迷うところなんですね。頭のほうが少し認知症が入ってしまって、わけが分からなくなってきて、痛いからただ鳴くだけとかね。
そうなったときに、飼い主さんに安楽死という方法もあるんですよ、ということを説明はするんですけど、実際、自分はやりたくはないんです。
——それは、院長ご自身が、ということですか。
助けるのが仕事ですからね。長年診ていて、自分にも懐いてくれたりしていると、やっぱり殺すということはちょっとつらいんです。ただ、ワンちゃんの苦痛とか、飼い主さんの負担とかを考えると、逆に安楽死したほうがいいんじゃないかな、と思うことがあるんです。
一応、自分の責任として、飼い主さんが選択できるように、安楽死という方法もありますよ、ということは言います。ただ、ほとんど、安楽死を選ばないです。
選択肢として説明はするけれども、自分ではやりたくない。そのどちらも同じ口から続けて出てきたことが、いちばん印象に残りました。
やっぱり、ここで長く診てきたから、やる側もつらいんですよね。でも、その部分も責任を持たされているわけだから、飼い主さんのいろんな立場とか考え方を理解してあげないといけないな、という形で結論を出しますけどね。
自分が逃げて済むなら、逃げたいと思うことがありますね。
院長によると、飼い主が施設に入り、介護が必要になった状態の犬を預かったこともあるそうです。食べること自体は何とかできても、体を支えてあげないと食べられない状態だった、と話してくれました。
——診察以外では、トリミングもされていましたよね。
うちのトリマーも長くいるので、よく腫瘍とか皮膚の病気を見つけてくれます。それはやっぱりね、飼い主さんも気がつかないんですよ。ですから、そこで見つけてくれるというのは、トリミングもやっていて、病院でやっているからよかったんだな、と思うことがありますね。
トリミングの利用条件については、公式サイトまたは病院へのお電話でご確認ください。
「ホームドクターとして、自分を使っていただいて」
——最後に、これから初めて来られる方へ、メッセージをいただけますか。
やはり、ホームドクターという立場をずっと貫いています。大きな病気とか大きな手術に直面したとき、自分で病院をあちこち選ぶ人がいます。ホームドクターの目から見て、この子でこの病気だったら専門医をこちらから紹介する。そういう形で自分を使ってもらったほうがいいと思うんですね。
そういうときでも、やはりホームドクターという私がもともと診ていれば、これは自分の手に負えないなと思ったら、こっちの病院がいいんじゃないか、大学病院がいいんじゃないか、と言えます。いいと思うところに行っていただいたほうが安全だと思うんですね。当然、私が全部やるわけじゃないから、こちらから他へ広げていく。そういう形をとらえるのがいいと思いますね。
「自分を使ってもらう」という言い方が、この日いちばん繰り返された表現でした。全部を自分で引き受けるという意味ではなく、どこへ行けばいいかを一緒に決める相手として置いてほしい、という話だと受け取りました。
——まずはいきなり大きい病気ということではなく、その前からお越しくださいね、という感じですね。
そういう感じですね。
最初のワクチンから、最期の相談まで。この日伺った話は、ぜんぶ同じ一本の線の上にありました。最初から任されると生涯の健康に責任を感じる。だから電話で予約を受けて、その子に必要な時間を自分で決める。手に負えないと思ったら紹介する。そして、選択肢として安楽死を説明しながら、自分ではやりたくないと言う。50年以上ひとつの街で診療を続けるというのは、こういう時間の積み重ね方なのだと感じました。
エンドー動物病院 基本情報
| 所在地 | 東京都新宿区北新宿1-28-13 |
|---|---|
| 電話 | 03-3371-7182 |
| 診療時間 | 午前10:00〜12:45 / 午後2:00〜7:00 取材日(2026年8月31日)の入口掲示より。最新は公式サイトまたは病院へご確認ください |
| 予約 | 予約制。来院前に電話予約 |
| 診療以外 | トリミング・ペットホテル |
| 公式サイト | エンドー動物病院 |
取材は2026年8月31日に行いました。診療日・診療時間などの最新情報は、公式サイトまたは病院へのお電話でご確認ください。
