目黒区中央町にある動物ノ病院 かれんは、杉下翔太院長の動物病院です。犬と猫の診療に加えて、お泊まりや日帰りのお預かり、歯磨き教室やパピークラスも行っています。
院長のご自宅には、体重30キロほどのハスキーを含む犬と猫がいます。薬を飲ませる大変さや介護の工夫も、飼い主として経験してきました。元気なうちから通ってほしい理由と、治療を家庭で続けるための相談について伺いました。
調子が悪くなる前から、元気な姿を知っておきたい

——獣医師を目指したきっかけを教えてください。
小学生のときに犬を飼い始めて、それからですかね。単純に、自分の子に何かあったら助けたい、という気持ちでした。
——開院するときは、どんな病院にしたいと考えていましたか?
何でも気軽に相談できるような場所にしたいなと思っていました。
あとは、なるべく健康なうちに来てほしいんです。うちはホテルや日帰りのお預かり、歯磨き教室やパピークラスをやっていて、必ずしも調子が悪くて来るわけではありません。元気なときに来てもらって、その子の元気な状態を把握したいというのがひとつ。
もうひとつは、体調を崩してしんどい状況でばかり来ると、病院が嫌なところになってしまうからです。元気なときに遊びに来て楽しい思い出を作ってもらうと、その後に調子が悪くなって来たときにも、治療がしやすくなります。

——いつもの状態を、一度見ておきたいということなんですね。
もともとおとなしい子もいれば、すごく活発な子もいます。この子はいつもこんな感じ、というのが分かっていると、様子がおかしいと言って来てもらったときに違いが分かるんです。
足を引きずっている、吐いているといった症状がはっきりしていればいいんですが、なんだかいつもと違う、と来られることもあります。飼い主さんもまだ、本当に調子が悪いのか分からない状況です。そういうときに普段のその子を知っていると、ちょっと顔つきが違うよね、普段なら尻尾を振って入ってくるのに、と気づけます。
記録は決まった項目ではなくメモ程度で、見たときの印象が大きいそうです。「回数来てくれればくれるほど、はっきり分かる。でも一回でも見ているのとは違う」とも話していました。
——病院で過ごす時間を楽しくしてもらうために、心がけていることはありますか?
正直、あまり特別に気をつけていることはないんですけども。とにかく普段から、スタッフにも可愛がってもらう感じですね。
いつものガムやブラシも、預かりのときに見せてもらう
——ブラッシングも、どんなブラシでどうやっているかは、ご家庭によって違いますよね。
そういう指導もしています。例えばホテルでお預かりしたときに、食後にこのデンタルガムをあげてください、と言われる。そうすると、日頃どういうものを食べているかが確認できますし、この子にはこのガムはちょっと硬すぎるからやめた方がいいですよ、とお伝えできます。
ブラッシングも、ホテル中にいつもやっているブラッシングをしてくださいと、いつも使っているブラシを持ってきてもらいます。それで、この子にはこのブラシは合わないなと分かることもあります。普段やっていることや使っているものが確認できるので、そういうところは意識しています。

——歯磨きやブラッシングで、心がけておくとよいことを教えてください。
何をやるにしても、普段から体を触るようなコミュニケーションを取っていた方がいいです。あとは、適切な道具を使うこと。その子に合った歯ブラシは体の大きさによっても違いますし、ブラッシングも、毛の長さや性質はワンちゃんによって全然違います。
——最初からその子に合った道具を使えているご家庭は、あまり多くないのでしょうか?
最近はSNSなどで情報が簡単に手に入るので、いろいろ調べて来られる方が多いです。ただ逆に、調べすぎて何がいいのか分からない、という方もいます。
それも結局は、この子のために一番いいものを考えてやっている結果なんですよね。なので、ちゃんと理由を説明して、この子にとってはこれがいいですよと伝えれば、ほとんどの方に伝わります。
説明のときは、なるべく専門用語を使わず、身近なものに例えるようにしているそうです。
薬を出すだけでなく、家で続けられる方法まで考える
——まだ来たことのない飼い主さんに、伝えたいことはありますか?
この病気にはこの薬、というのはある程度決まっているので、今の時代、どの病院で誰が診ても、そう大きく違うことはないと思います。ただ、この薬を飲めば治るとしても、本当に薬を飲めるのか。飲ませるのが難しいなら、別の方法はないか。そこは動物によっても、ご家族の生活スタイルによっても違ってきます。
獣医師としては、この病気だからこの薬を飲めば治る、と分かっているし、それは正しいんです。ただ、飲んでくださいとお渡しして終わりにするのではなく、果たしてそれがちゃんとできるのか、というところまで目を向けていきたいと思っています。
そう考える背景には、院長ご自身の暮らしがありました。
私自身、今うちには猫が3匹、犬が2匹います。犬は30キロぐらいの大型犬もいますし、今いるのは10キロぐらいの子。亡くなった子には20キロぐらいの子もいました。猫も普通の黒猫もいれば、長毛の猫もいます。本当にいろいろな子と生活してきました。
実際に調子が悪くなって薬を飲ませるとなると、なかなか飲まない子もいますし、年を取ってご飯を選り好みするようになる子もいます。朝の忙しいときに薬をあげて、ぺっと出されて、またおやつで包んであげて。こっちも支度して仕事に出ないといけないのに、それをやるのか、という経験が実際にあります。

例えば皮膚病で、この程度なら週に2、3回シャンプーしてくれれば治りますよ、とこちらは簡単に言います。でも実際に、週2、3回のシャンプーが本当にできるのか。シャンプーして終わりではなく、しっかり乾かさないと意味がないので、そこまで含めたら一体どれだけ時間がかかるのか。その大変さも経験しています。
獣医師としては、薬を飲むまでもないからシャンプーすれば治る、と良かれと思って言っているんです。ただ、それが逆に負担になってしまうこともあります。なので、その子の性格とご家族の状況を加味して、一緒に考えていければと思っています。薬が難しかったら、じゃあこれならできますか、と。些細なことでもいいので、気軽にご相談ください。
正しい治療を伝えるところで終わらず、それが毎日の暮らしの中で続けられるかまで一緒に考える。院長が飼い主として重ねてきた経験から出てきた考え方だと感じました。
大型犬との暮らしも、介護の工夫も相談できる
——獣医師としてだけでなく、飼い主としてのアドバイスもできるわけですね。
そうですね。うちの30キロの子なんて、どれだけ悪さをしているか。このくらいの高さなら普通に届くので、いろいろなものを食べてしまう誤食もありますし、冷蔵庫を開けたりもします。うちはこういう対策をしていましたよ、と言えます。
介護の経験もあります。猫は1年ぐらい寝たきりでしたし、犬も後ろ足が麻痺して車椅子を作りました。うちはここで車椅子を作りました、ここは当日で作ってくれましたよ、と。実際に使っていたものも残っているので、お見せすることもあります。100円ショップのこれが使えます、といったことも、私と妻でいろいろ試行錯誤してきました。
なので、シニアの子の介護を含めて、ケアの相談は結構多いです。獣医師としてだけでなく、飼い主としてのアドバイスもできるので、いろいろ気軽に相談していただければと思います。
——30キロというと、どんな犬種なんですか?
今うちにいるのはハスキーです。飼い主としてのアドバイスができるところは、かなり強みかなと思っています。

開業のきっかけを伺ったとき、院長は最初「特にない」と答えていました。取材の終わりに、そこへ改めて言葉を足してくれました。
僕の中の一番の理由は、うちの子のためなんです。勤務医のときは、だいたい12時間ぐらい留守番をさせていました。自分の病院を作れば、仕事中もずっと一緒にいられますし、夜中に体調の変化があってもすぐに対応できます。
腫瘍の認定医として。専門的な治療は専門病院へ紹介も
——先生の知見が生きた、印象に残っている症例はありますか?
一応、腫瘍の認定医を持っているので、ほかの病院で悪性の腫瘍と言われて、うちに来られる方もたまにいます。改めて調べると、がんではあるものの、すごく早く進行するようなものではなかった。そこから2年ぐらい、元気にしてくれている子もいます。
院長は、腫瘍(がん)の診療分野の認定である獣医腫瘍科認定医Ⅱ種を取得しています(公式サイト)。
——セカンドオピニオンの相談もあるのでしょうか?
二次診療の設備があるわけではないですが、ほかの病院でこう言われたんだけど、というセカンドオピニオンはちょくちょくあります。
セカンドオピニオンは、治療方針などについて、かかっている病院とは別の獣医師にも意見を聞くことです。
——対応が難しい場合は、どちらに紹介されるんですか?
目黒区の獣医師会という集まりがあるので、その中で、例えば明日うちが休みだから、明日はこの先生のところに行ってください、ということはあります。完全に二次診療としての紹介であれば、この辺りには専門病院がたくさんあるので、整形外科ならこの病院、心臓ならこの病院と、専門の病院に紹介しています。

インスタのメッセージから相談する方も
——予約はどのような方法で取られていますか?
初めての方も通っている方も、基本は同じで、電話とウェブです。あとはうちはインスタが多くて、DMが来ることも結構あります。
患者さんとインスタでつながっていることがかなり多いんです。今日吐いてしまったんですけど行った方がいいですか、といった相談をDMでしてくださって、その延長で予約を取る方も多いですね。
LINEもあって、病院の情報を一斉送信で流したりしています。ただ、若い方は最近LINEよりインスタを使う方が多いみたいです。
——通われている方は、この近くにお住まいの方が多いですか?
特に犬は、散歩の途中に歩いて来られる方が多いですかね。猫の場合はタクシーで来られる方が多いので、猫の方が少し範囲が広めです。

——これから、どんな病院にしていきたいですか?
予防医療に今も力を入れているので、最初からお話ししている、元気な状態のときに来てほしいというのにも含まれますが、健康診断やワクチンのように元気なときに来るものを、しっかりやっていってほしいなと思っています。そういうところに力を入れていきたいです。
病気になってから行く場所ではなく、元気なうちから顔を出しておく場所。お預かりのときに見せてもらういつものブラシも、院長の自宅での介護の工夫も、その子と家族の毎日を知ったうえで相談にのるためのものなのだと感じました。
動物ノ病院 かれん
| 所在地 | 東京都目黒区中央町1-2-3 |
|---|---|
| 電話 | 03-6412-8224 |
| 診療対象 | 犬・猫(待合室・診察室は犬と猫で別) |
| 予約・相談 | 電話、Web予約、Instagram |
| お預かり | お泊まり、日帰り・幼稚園 |
| 認定 | キャットフレンドリークリニック Gold Level(ISFM) |
| 公式サイト | 動物ノ病院 かれん |
診療時間や休診日、Web予約の窓口は、公式サイトでご確認いただけます。
