取材のご相談(病院の方へ)
ゆげどうぶつクリニックの弓削雄宏院長
インタビュー動物病院
東久留米市・南町の動物病院

喫茶店みたいに、気楽に入れる病院へ。ゆげどうぶつクリニックに聞く、飼い主さんが選べる治療

取材: 2026年9月14日 / 取材・文: 動物病院ナビ編集部

東久留米市南町のゆげどうぶつクリニックは、弓削雄宏院長が2011年に開院した動物病院です。新所沢街道沿いにあり、建物の大きな肉球の形をした丸窓が目印です。犬や猫のほか、ウサギやハムスター、フェレットなども診ています。

院長は、治療の選択肢をいくつか並べて、飼い主さんに選んでもらう診察をしています。「治療しない」という選択肢まで話せる雰囲気のつくり方と、動物病院とのつきあい方について伺いました。

なるべく飼い主さんと近い距離で話をしたかった

弓削雄宏院長
弓削 雄宏
ゆげどうぶつクリニック 院長
西東京市で生まれ育つ(公式サイト)。日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)を卒業後、動物病院での勤務を経て、2011年にゆげどうぶつクリニックを開院。

——獣医師になられたきっかけは、何だったんですか?

父が鹿児島の出身なんです。牛をやっていて、夏休みにはよく連れて行ってもらっていました。本当は牛などの大動物の医療をやりたいと思っていたんですけど、知らないうちに小動物のほうに進んでいました。

母も動物が好きで、小さいときから動物が周りにいました。正直、漠然と動物関係の仕事をしたいなと思っていて、そうなると一番いいのが獣医かな、と。

皆さん、使命感に燃えて、というのがあるじゃないですか。骨折を治してとか、そういうのが、僕にはあまりないんです。ただ、常に動物がそばにいる環境で、いろいろな犬や猫の生き死にを見てきました。

動物を飼うと、15年とかいう期間を過ごしていかなきゃいけない。そういうところに、何かしら関われたらいいなと思っていました。

——動物園が好き、というのとは違って、身近にいたから、という感じですか?

身近にある感じですね。小さいころ、鹿児島に帰ったときは、牛とよく戯れていました。現地の人の話では、子どもたちは怖がって近づかないそうで、果敢に牛に関わりに行っていた僕は、ちょっと変だったんでしょうね。子どもながらに、親しみを感じていたんでしょうね。

——ここで一次診療の病院を始められたのは、どうしてだったんですか?

まず場所は、地元なんです。僕がひばりが丘で、妻が清瀬なので、地元で土地を探していました。東久留米がちょうどお互いの実家の中間で、静かでちょうどいい土地だったので開業した、というのもあります。

ゆげどうぶつクリニックの外観
外観(ゆげどうぶつクリニック)

一次診療については、正直、高度医療にはあまり興味がなくて、なるべく飼い主さんと近い距離で話をしたい、というのがありました。

でも、適当にはやりたくない。医療のレベルとしては、なるべく1.5次診療ぐらいのつもりで、知識が古くならないように常にアップデートして、できる限りいい治療を提供したい、というのはもちろんあります。ただ、ギラギラした診療は、個人的にあまり好きじゃないんです。

一次診療は、かかりつけの動物病院で受ける日常の診療のことです。専門の病院で受ける診療は二次診療と呼ばれ、「1.5次診療」はその間にあたる診療を指して使われる言葉です。

病院病院している感じが、ちょっと苦手なんです。なかなか院長に聞けないから、会計のときに受付で看護師さんに話を聞く。僕も仕事で、そういう場面をよく経験していて、嫌だなと思ったんです。それで、診察室で飼い主さんと雑談しながら、全部そこで引き出せる。そういう感じにしたかったんですよ。

喫茶店みたいな感じで、気楽に入れる。なるべく敷居を低くして、みんなでお話ができる。お財布を持ってこないで来ました、という感じでもいいんです。なるべく近い距離で仕事をしたかった、というのがありますね。

「これをやりなさい」とは絶対に言わない

——お話ししやすい雰囲気は、意識してつくっているんですか?

上から目線にならないようにして、飼い主さんがやりたいことを引き出せるように、なるべく丁寧にしゃべることを意識しています。うちの診療スタイルは、とにかく「これをやりなさい」とは絶対に言わないことです。

だいたい選択肢をいくつか並べて、「どれがいいですか?」と。例えばがんの治療でも、「治療しないという選択肢も全然ありです」とお話ししています。そういう選択肢を気兼ねなく言えるように、なるべく雰囲気づくりをしているんです。

飼い主さんは、「これをやっちゃいけないのかな?」と絶対に不安に思っているし、怒られると思って、あえて言わないこともあります。こちらも一生懸命に医療を提供しているのに、それが飼い主さんのやりたいこととずれたまま亡くなってしまう。それが一番残念だと思うんです。

だから、なるべく話をして、「治療したくないんだよね」という気持ちも引き出します。飼い主さんは、本当はやらなきゃいけないけどやれない、ということに罪悪感を持つんです。なるべく罪悪感を持たせないように、「治療しなくてもいいよ」という選択肢を、自信を持って言えるようにしています。

周りは、絶対に「やらなきゃダメだ」とか言うじゃないですか。そういう声もなるべく聞かないようにして、飼い主さんがその子と向き合える環境をつくれるよう、すごく意識しています。

そのためには、こっちがちゃんと知識を蓄えて、選択肢を増やしていかなきゃいけない。ただ、それは僕らの側の話なので、前面には出さないようにしています。たまに「ここで避妊手術とかできるんですか?」と言われちゃうんですけど、「何でもやってますよ」と。

話す弓削雄宏院長
ゆげどうぶつクリニック 院長・弓削雄宏先生

——選択肢があると、納得感がありますね。

難しいですけどね。100パーセントということはないから、トライアンドエラーの繰り返しになるんです。飼い主さんにも治療を考えてもらいたいので、治療を詳しく話すようにしています。

——というと?

皮膚病でも、「薬を飲んでね」ではなくて、「この薬はこういう効果があるから、これぐらい効くかもしれない。効かなかったら、それを踏まえて次にいきましょうね」と。治療の先まで、ちゃんと見通せるように話をしています。

飼い主さんが「ん?」という顔をしても、それをちゃんと汲み取って、話したうえで、「全部聞かなくていいですから、飲んでくださいね」と。はなから、わからないだろう、ということは絶対に言わないし、思わない。そうすると、飼い主さんが治療を選べる、というか。

僕が医者に行って嫌だなと思ったことは、自分ではしないようにしています。自分がされたら嬉しいと思うことを、なるべくやってきました。

——診察にかける時間も、病院によってずいぶん違うようですね。

忙しくなると5分で回す、ということは僕らもやりますけど、あまり気にしないようにしています。裏で調整するんです。診察では時間をかけて、裏をなるべく早く。

お待たせしてしまうこともありますけど、顔色を見ながら、時間をかけたい人にはなるべくかけて、さらっといける人はさらっと。5分以内でスパッと切る、ということはしないようにしています。しゃべりたい人には、なるべく時間を取るようにしています。

動物病院は、とにかく便利に使うべきなんです

——病院の側から、「まずは毎年、健康診断に来てね」といったおすすめはありますか?

言わないです。「ご用意はありますよ」と。営業っぽくなっちゃうのが、僕は嫌なんです。フィラリアの予防も、「やらないと大変だからやりなさい」とは絶対に言いません。「こういう予防がありますよ。ぜひやってくださいね」と。

「何でもやります」と前面に押し出さないので、ちょっとファーストチョイスにならないところがあります。ただ、来ていただいた方には、しっかり詳しくお話をするので、一度来ていただいたら、ほかへ行ってしまうことはあまりないです。

——飼い主さんの側は、どうやって病院を選べばいいんでしょう?

雰囲気で決めていただくといいんじゃないですかね。行ってみないとわからないから、行ってみて、ですよね。うちはイオンが近くて、それがランドマークになっていますし、窓が肉球なので、みんなそこが気になるそうなんです。

——初めて来るときは、まず電話をしたほうがいいですか?

うちは、もういいです。気軽に来てください、とお話ししています。

——予約なしでも?

うちは予約なしでもいいです。セカンドオピニオン的にいらっしゃる方には、「経過報告書があると助かります」とお伝えしています。ただ、情報を取れない方もいらっしゃるので、「情報がなかったら結構ですよ、お話だけでいいですよ」と。電話口でも、なるべく優しく話すようにしています。

セカンドオピニオンは、治療方針などについて、かかっている病院とは別の獣医師にも意見を聞くことです。

ゆげどうぶつクリニックの受付
受付。カウンターの下のフックにリードをかけておけば、会計のときに両手が空きます(公式サイト)

——まずは気軽に、ということですね。

僕の持論は、動物病院をとにかく便利に使うべき、ということなんです。この病気はこっち、この病気はあっち、という使い分けも全然OKです。ほかの先生でこれをやったよ、とおっしゃっていただければ、それを軸に「じゃあ、こうやって組み立てていきましょうか」と。

かかりつけの先生がいるなら、「この薬を出したから、聞いてみてね」と。次からうちに来てね、とは絶対に言わないです。来てほしいんだけど(笑)。そういう色を出すと、飼い主さんには絶対にわかるんです。

一つの病院じゃなきゃダメだと思って、気を使う方もいらっしゃるんです。でも、それをやっちゃうと、いざ治療が詰まったときに話が聞けない。ほかの病院も全然OKですよ、と言っています。

動物病院を選ぶのも、結局は人なんですよね。僕の持論として、治療はどこの先生でも同じだと思っています。同じレベルで勉強してきて、同じ国家試験を通っているわけだから、レベルが違うというのは、本当はありえない話です。もちろん科によって得意不得意はありますけど、それはベースがあって、ちょっと抜きんでているだけ。あとは人柄なのかな、と。

——開院から15年ほど。飼い主さんに変化はありましたか?

ないと思います。今はAIで検索して、みんな頭でっかちになってくるぐらいですね。

——AIを使って、自分で症状を調べてくる飼い主さんについては、どう思われますか?

全く問題ないと思います。むしろ、どんどんやるべきだと思いますね。頭でっかちになっていただいて、情報の整理をここでしていただければいい。だって、自分の犬ですからね。自分で考えて治療しなきゃ。

ただ、AIの傾向として、やっぱり脅かすんですよね。大きい病気があるから先生に確認してもらって、という締めくくり。それでびっくりして、みんな来ますよね。突然「心臓を診て」と来られて、それがAIで調べたら、という話なんです。

でも、いいんじゃないですかね。僕らも緊張感を持って仕事ができますし、AIは、行かなきゃという気持ちになるので、病院に来るきっかけとしては、とてもいいんじゃないですか。

僕は逆に、とにかく(ネットを)見てください、と言っています。獣医の言ったことも全部信用しないで、やっぱり裏を取っていただいて。人間でもセカンドオピニオンは大事じゃないですか。ネットと獣医でうまくすり合わせて、それで納得できれば治療をやる。僕は、すごくいいと思いますけどね。

ほかの病院と使い分けてもいいし、AIで調べてきてもいい。院長の話からは、飼い主さんが自分で考えて選ぶことを、病院の側から後押ししているように感じました。

新人のころにもらった手紙が、ずっと印象に残っています

取材の終わりぎわ、院長が自分から切り出したのが、勤務医になって1年目のころの話でした。

猫を飼っている方の話です。臨床を始めて1年目で、何もできなかったころ、初めて点滴をやれと言われて、ひたすら点滴をしていました。仕事がわからないことだらけで、でも点滴だけはしていた。なんか申し訳ないな、と思っていたんです。

その後、その子は亡くなったんですけど、申し訳ない気持ちでいたのに、最後にその方から「いろいろしていただいて、ありがとうございます」という手紙をもらったんです。点滴をやるだけでも、飼い主さんにとっては、これだけ癒しになるというか、助けになるんだな、とすごく勉強させていただきました。

点滴は、治療としては全然間違っていなくて、今思い浮かべても、一番いい治療ができていたんです。でも、その時の僕の気持ちとしては、バックグラウンドの知識がないなかでやっていたから、本当にこれでよかったんだろうか、とずっと不安に思っていました。

でも、飼い主さんにとっては、それがすごく良かったとおっしゃっていただいたんです。同じ治療をやっていても、心持ちで変わるんだな、とすごく勉強させられました。

その手紙は些細なひと言だったんですけど、本当に印象に残っていて、それが頑張る気合いになりました。2、3年は本当に大変で、いろいろな先生にご迷惑もかけましたし、できないなかでもがいていました。

その方の印象から、なるべく飼い主さんに寄り添った治療をしたい。優しく話をして、飼い主さんの不安感を取り除いてあげたい。それが最後は、がんの治療でも「やらなくてもいいですよ」という選択肢をなるべく引き出せるようにする、というところに、全部つながっていくんです。

手を合わせて笑う弓削雄宏院長

何が言いたいかというと、その方が口コミを書いてくださっていたんです。その時のお礼と、僕の名前を探して見つけたことを書いていただいていて、すごく感動しました。

——書いてくださったのは、開業されてからなんですね。

開業して、何年かたったころです。僕、口コミが怖くて見ていないんですよ。ふと見たら、それが書いてあったんです。本当に嬉しかったです。やっぱり、飼い主さんに寄り添うということは間違っていないんだな、とちょっと実感しています。

うちはギラギラしていないんですよ、病院として。だから、それが嫌な人、もっと最先端の治療をやりたい人は、ほかへ行っちゃいます。もうちょっと我慢したら、ちゃんとやるのにな、と思いながら(笑)。

——最後に、初めて来られる飼い主さんへ、ひと言お願いします。

生まれたところから最後に亡くなるところまで、そばに寄り添っていきたい、というのが基本です。動物病院も、やっぱり人なので、来ていただいて、話していただいて、この人に任せられるなと思ったら、ぜひ来ていただきたい。

さっきは一次診療とふわっと言いましたけど、画像診断に力を入れたり、心臓も今かなり力を入れていたりと、力を入れているところはいっぱいあります。そういうところも見ていただいて、ご相談いただければと思います。

10回心配事があって、9回は「大丈夫ですよ」ということでも、全然大丈夫なので、何でもいいから来てください、と言っています。雑談しに来ていただければ。うちは、そういうスタイルで仕事をしています。

何もできなかったと振り返る1年目に届いた、一通の手紙。「治療しない」も含めて選択肢を並べ、何でも話せる雰囲気をつくる今の診察は、そこからつながっているのだと感じました。

ゆげどうぶつクリニック

所在地東京都東久留米市南町3-2-24
電話042-497-4253
院長弓削 雄宏
診療対象犬、猫、ウサギ、ハムスター、フェレットなど(爬虫類・両生類などは対象外)
予約予約なしでも受診できます
アクセス新所沢街道沿い、南町小学校の北。バス停「イオンモール東久留米南」から徒歩2〜3分
公式サイトゆげどうぶつクリニック

診療時間や休診日は、公式サイトの休診日カレンダーでご確認いただけます。