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症状と受診の目安

犬が震えるときに考えられること — 原因と急いで受診したいサイン

公開 2026年7月6日/更新 2026年9月28日 著者 動物病院ナビ編集部

犬の震えは、それだけで病名が決まる症状ではありません。寒さや恐怖への体の反応として起こることもあれば、中毒や、血糖・カルシウムの異常、神経の病気のサインとして現れることもあります。MSD獣医マニュアル(Merck Veterinary Manual)は、震えを神経の病気の主なサインの一つに挙げています [1]。この記事では、獣医学の資料をもとに、考えられる原因、様子の見方、急いで受診したいサイン、動物病院での検査と治療の流れをまとめます。

考えられる主な原因

寒さ

体が冷えると震えることがあります。ただし、震えは低体温症の確かなサインではないとされています。低体温症では、脈が遅くなる、呼吸が浅くなる、意識がもうろうとする、倒れるといった変化がみられます [2]。

恐怖や不安

雷や花火、慣れない場所などで震えることがあります。震えや身震い、その場を避けようとする行動は、恐怖と不安のどちらでもみられるサインです [3]。大きな音に対して急に強い不安やパニックを示す状態は「音恐怖症」と呼ばれ、雷に対するものが最も多く、花火などの大きな音でもよく起こります [3]。

中毒

  • チョコレート: 症状は食べてから6〜12時間で現れることが多く、水をたくさん飲む、嘔吐、下痢、落ち着きのなさから始まり、進むと震えやけいれんが起こります [4]。環境省のガイドラインも、チョコレートは犬に与えてはいけないものとしています [5]。
  • キシリトール: 砂糖不使用のガムやあめ、ピーナッツバター、焼き菓子、歯みがき粉などに使われる甘味料で、犬では少量でも血糖値の低下や肝臓の障害を起こします [5][6]。低血糖の症状は早ければ食べてから30分ほどで現れ、嘔吐、脱力、ふらつき、元気がない、けいれんなどがみられます [6]。
  • カビの生えた食品や生ごみ: クルミやピーナッツ、乳製品、堆肥などに生えたカビがつくる毒で、食べてから1〜2時間、遅い場合は数時間のうちに、嘔吐、震え、けいれんなどが起こることがあります [7]。

低血糖(とくに超小型犬の子犬)

トイ種の子犬は、生後6か月までの間に低血糖を起こすことがあります。肝臓の働きが未熟なことが関係すると考えられており、子犬用フードを回数を多くして与えることで管理でき、成長とともに治まるのが一般的です [8]。

授乳中の低カルシウム血症(産褥テタニー)

乳の量が最も多くなる出産後2〜3週ごろに、母犬の血液中のカルシウムが下がって起こる、命に関わる病気です。子の数が多い小型犬に多いものの、どの犬種でも、授乳期のいつでも起こりえます。初めはパンティング(口を開けた速い呼吸)や落ち着きのなさがみられ、進むと震え、筋肉のぴくつきやけいれん、こわばり、発熱、発作が起こります [9]。

神経の病気

脳の小脳が障害されると、頭や足の動きの協調がとれなくなり、震えやふらつきが起こります [1]。「特発性全身性振戦症候群」は、全身の細かな震えが急に始まり、不安や興奮で強くなる病気で、多くは5歳未満、体重15kg未満の犬にみられます [10]。副腎皮質ステロイドによる治療に反応し、33頭を調べた多施設の研究では、経過が「良好」だった犬が55%、「許容できる」が24%でしたが、再発した犬もいました [10]。

震えか、けいれん発作か

全身のけいれん発作では、突然意識がなくなり、手足を突っ張る・曲げ伸ばしする、便や尿をもらす、瞳孔が開く、声を出す、よだれを流すといった変化がみられます [11]。そのため、震えている間に意識があり、呼びかけに反応できるかどうかは、獣医師に伝えたい大切な情報です。発作がうまく抑えられないと、発作が短い間隔で繰り返したり、止まらずに続いたりするようになり、命に関わることがあります [11]。

様子の見方

次の点を記録しておくと、受診したときに状況を伝えやすくなります。

  • いつから、どのくらいの時間続いたか、何回目か
  • 全身か、頭や後ろ足など体の一部か
  • 休んでいるときか、立ち上がる・歩くなど体を動かすときか
  • 意識や呼びかけへの反応があるか
  • 寒さ、雷、来客など、きっかけになりそうな出来事
  • 口にした可能性のあるもの(食べ物、ガム、薬、生ごみ、堆肥など)と、その時刻
  • 嘔吐や下痢、元気や食欲の変化

震えている間の様子をスマートフォンで動画に残しておくと、診察のときに獣医師にそのまま見てもらえます。

急いで受診したいサイン

次のような状態は、命に関わる病気や中毒のサインのことがあります。

  • けいれん発作が5分を超えて続く、または意識が戻らないうちに次の発作が起こる。この状態は「てんかん重積状態」と呼ばれます。24時間以内に発作が繰り返す状態は「群発発作」と呼ばれます [11][12]。
  • チョコレート、キシリトールを含む製品、カビの生えた食品や生ごみを口にした可能性がある [4][6][7]。キシリトールでは、肝臓の障害による症状が24〜48時間たってから現れることもあります [6]。
  • 授乳中の母犬に、落ち着きのなさ、速い呼吸、震えやこわばりがある。すぐに獣医師による治療が必要とされています [9]。
  • 超小型犬の子犬が、震えに加えてぐったりしている、ふらつく、けいれんしている。低血糖のサインのことがあります [6][8]。
  • 寒さにさらされた後、脈が遅い、呼吸が浅い、意識がもうろうとしている、倒れた。低体温症のサインです [2]。

動物病院での検査と治療の流れ

診察では、震えが起きた状況や口にしたものを確認したうえで、体の診察と神経の診察が行われます。血液検査は、神経の働きに影響する代謝の異常を調べるために行われ、必要に応じてX線検査、MRI検査、脳脊髄液(脳と脊髄のまわりを満たす液)の検査が行われます [13]。治療は原因によって異なります。

  • チョコレートを食べて間もなく、症状が出ていない場合は、吐かせる処置が検討されます。目安は食べてから2時間以内です [4]。
  • 授乳中の低カルシウム血症では、カルシウムを静脈から投与すると、多くは15分以内に改善します。子犬には12〜24時間授乳させずに人工乳などを与え、母犬には授乳期間が終わるまでカルシウムを補います [9]。
  • 特発性全身性振戦症候群では、副腎皮質ステロイドが使われます [10]。
  • 恐怖による震えでは、苦手な刺激に少しずつ慣らす方法(脱感作)と、よい体験と結びつけ直す方法(拮抗条件づけ)を中心にした行動修正が行われ、薬が処方されることもあります [3]。

予防と家でできること

  • チョコレートやキシリトールを含む製品は、犬の届かない場所に保管することで、口にする機会を減らせます。環境省のガイドラインも、買い置きのチョコレートを部屋に置いたままにしないよう呼びかけています [5]。
  • 生ごみや堆肥、カビの生えた食品も、震えを起こす毒の原因になるため、犬が近づけない場所で管理することが大切です [7]。
  • 超小型犬の子犬では、子犬用フードを回数を多くして与えることが低血糖の管理になります [8]。
  • 妊娠中の犬にカルシウムのサプリメントを与えると、出産後の低カルシウム血症をかえって起こすことがあるため、与えないこととされています。妊娠・授乳期には栄養バランスのとれた適切な食事を与え、授乳中は食事と水を自由にとれるようにすることが予防として挙げられています [9]。
  • 体が濡れて冷えたときの応急手当として、まず体を乾かし、熱すぎないお湯を入れたボトルで体を包むように温める方法が示されています [2]。

まとめ

  • 震えは、寒さや恐怖への反応から、中毒、低血糖、授乳中の低カルシウム血症、神経の病気まで、さまざまな原因で起こります。
  • 意識の有無、口にしたもの、年齢や授乳中かどうか、震え以外の変化が、原因を考える手がかりになります。
  • 急いで受診したいサインに当てはまるときや、原因に心当たりのない震えが続くときは、かかりつけの動物病院に電話で相談してください。

参考文献

  1. Schubert T. Nervous System Disorders and Effects of Injuries in Dogs. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  2. Textor J. What to Do in a Dog or Cat Emergency. MSD Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  3. Landsberg GM. Behavior Problems in Dogs. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  4. Hayes C. Chocolate Toxicosis in Animals. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  5. 環境省. 飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~(1-4 与えてはいけないもの、注意が必要なもの). 2018年(2021年更新). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  6. Hayes C. Xylitol Toxicosis in Dogs. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  7. Mostrom MS. Tremorgenic Neuromycotoxicosis in Dogs. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  8. Parsley E. Congenital and Inherited Cerebral Disorders in Small Animals. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  9. Hall JA. Disorders of Calcium Metabolism in Dogs. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  10. Kajin F, Meyerhoff N, Meller S, et al. Canine idiopathic generalized tremor syndrome, immune-mediated? Front Vet Sci. 2024;11:1453698. 原典を開く(2026年9月28日確認)
  11. Charalambous M. Epilepsy in Small Animals. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  12. Castel A. Anticonvulsants for Treatment of Animals. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  13. Schubert T. The Neurologic Evaluation of Dogs. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)