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夜間・休日の急病に備える — 夜間救急の仕組みと、事前に確かめられること

公開 2026年7月6日/更新 2026年9月28日 著者 動物病院ナビ編集部

動物の具合が急に悪くなる時間は選べません。かかりつけの病院が閉まっている夜間や休日に、どこが受け皿になり、受診までにどのような手順があるのかは、地域や病院によって異なります。この記事では、夜間救急の仕組みと、平時のうちに確かめられる事柄を、獣医師会と夜間救急病院の公開情報、獣医学のマニュアル、環境省のガイドラインにもとづいて整理します。施設の情報は2026年9月28日に各公式サイトで確かめたものです。

夜間・休日の診療を担う施設

東京都獣医師会は、会員の動物病院が当番制で夜間診療を行う事業を2018年3月31日に終え、現在は常設の夜間診療対応病院として6施設を案内しています。夜間救急の専門施設のほか、24時間診療の病院と往診専門の施設が含まれ、夜間の診療時間は20時から翌3時・5時・6時・8時までと施設によって異なります[1]。

運営の形も施設ごとに違います。川崎市獣医師会の夜間動物病院は、獣医師会が運営し、獣医師会から選ばれた獣医師が診療する施設です。夜間だけ開く病院で入院設備はなく、翌朝には退院して主治医の診療を受けることを前提にしています。重い症例は、主治医と飼い主の同意があれば、主治医を紹介元として同じ建物にある日本動物高度医療センターで治療を続けられるとしています[2]。

東京都世田谷区のTRVA夜間救急動物医療センターは、地域の獣医療を支える一般社団法人が運営し、20時から翌6時まで(電話受付は5時まで)診療しています。かかりつけの動物病院の診療を支えるための施設と位置づけ、診療後はかかりつけの病院を再び受診するよう求め、かかりつけ医に報告書を送っています。2022年11月から2023年10月までの外来は7,770件(犬5,842件、猫1,928件)でした[3]。

川崎市獣医師会の夜間動物病院は救急以外の診察や手術、電話での健康相談を受け付けておらず[2]、TRVAも一般の動物病院のような外来診療は行っていません[3]。東京都獣医師会も、夜間は予防注射など急を要さない診療は受け付けないこと、施設によって診療できない動物種があることを注意点に挙げています[1]。

かかりつけ病院の時間外の方針

獣医師法は、診療を業務とする獣医師に、正当な理由がなければ診療を拒んではならない義務を定めています[4]。日本獣医師会の「小動物医療の指針」は、正当な理由の例として獣医師自身の病気や不在、手術中などを挙げています。そのうえで、分娩の前後や手術の後など緊急の対応が予測される場合には、予測される事態とその対処法、獣医師への連絡方法、診療できる時間などをあらかじめ飼い主に伝えておくよう求めています[5]。

MSD獣医マニュアルは、緊急事態が起きる前に獣医師と話しておくと必要なときにすぐ動けるとし、事前に答えを知っておきたい問いとして、次のものを挙げています[6]。

  • 診療時間外に病気やけがをしたとき、どこに電話するか
  • 最寄りの24時間対応の救急病院はどこか(サイトを確認し、経路を地図で確かめる)
  • 応急手当の道具はそろっているか、どこに置いてあるか
  • 安全な保定や搬送の方法、必要な場合の口輪

同じマニュアルは、ペットの医療情報とかかりつけの電話番号をすぐ見つけられるようにしておくことも挙げています[6]。

受診までの流れ

MSD獣医マニュアルは、救急の対応は獣医師への電話から始まることが多いとし、何が起きたかを説明できるようにしておくこと、電話で応急手当や安全な運び方の指示を受けられること、事前の電話で病院が受け入れの準備をできることを挙げています[7]。東京都獣医師会、川崎市獣医師会の夜間動物病院、TRVAは、いずれも来院前の電話を求めています[1][2][3]。川崎市獣医師会の夜間動物病院は完全予約制で、確認した時点のサイトでは、診療日を限定しているため来院前に電話で確かめるよう案内していました[2]。

病院に着くと、症状の重さによって治療の順番が決まります。MSD獣医マニュアルによると、救急では命にかかわる問題から先に治療し、意識の有無を確かめたあと、気道・呼吸・循環を評価します[8]。TRVAも、来院後にスタッフが病状から緊急度を推し量り、状態によって診療の順番が前後するとしています[3]。

獣医師が尋ねるのは、まず何が起きたかと簡単な病歴で、状態が落ち着いたあとに、過去の病気、服用中の薬、アレルギー、最後のワクチン接種などを詳しく聞くとされています[8]。施設が持参を求める物も、こうした情報にかかわります。川崎市獣医師会の夜間動物病院は、翌日に受診するかかりつけ病院の診察券や薬袋を[2]、TRVAは服用中の薬、血液検査や尿検査の結果、便・尿・吐いた物など診療の参考になる物、異物を飲み込んだ場合はそれと同じ物を挙げています[3]。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン(一般飼い主編)」も、災害時に持ち出す情報として、ワクチンの接種状況、既往症、投薬中の薬、検査結果、健康状態、かかりつけの動物病院の情報、ペットの写真を挙げています[9]。

急を要するとされる状態

MSD獣医マニュアルは、すぐに治療が必要な例として、外傷、ショック、中毒、重いやけど、呼吸困難、続くけいれん、不整脈、意識の消失、大量の出血、尿の流れが止まった状態、臓器が体外に出ている状態、ヘビにかまれた疑い、熱中症、骨が見える傷、難産を挙げています[8]。また、けがや病気の中には、影響がすべて表に出るまでに24〜48時間かかるものがあるとしています[6]。

いくつかの状態については、時間の目安も示されています。雄の猫は尿道が長く細いため尿路が詰まることがあり、緊急の状態とされています。詰まった猫は何度も排尿しようとしても少量しか出ず、完全に詰まった場合は治療しなければ2〜3日で死に至ることがあるとされています[10]。食べ物では、チョコレートによる中毒の症状はふつう食べてから6〜12時間以内に始まり、キシリトールを含む製品では30分以内に低血糖の症状が出ることがあり、肝臓の障害の症状は1〜2日後まで出ないことがあるとされています。ぶどうやレーズンで腎不全を起こした犬の報告もあります[11]。

誤食については、日本中毒情報センターの「中毒110番」が、人だけでなく犬や猫など動物の中毒の問い合わせも受けています[12]。動物の急性中毒の問い合わせは年間約500件あり、その9割が犬の事例です[13]。

夜間の費用と支払い

夜間の診療は、昼間とは料金の体系が異なる場合があります。川崎市獣医師会の夜間動物病院は、夜間だけの開院のため料金は昼間の一般病院より若干割増とし、支払いは当日にクレジットカードかPayPayで精算する形です[2]。TRVAは、夜間診察料を8,800円(税込)とし、内科的な処置で終わる場合の目安を、対症療法のみで2万円から、中等度で4万円から、重症で8万円から、麻酔が必要な場合を内視鏡で15万円から、開腹手術で30万円からと公開しています。支払いはクレジットカードの一括払いです[3]。

ペット保険については、TRVAは窓口精算に対応しておらず、保険の請求は飼い主が行う形です[3]。窓口精算の仕組みは「ペット保険と窓口精算の基礎」にまとめています。

動物を運ぶときの注意点

MSD獣医マニュアルは、けがや痛みのある動物はかんだりひっかいたりすることがあるとし、安全な場合は犬に口輪を使うこと、ただし胸にけがのある犬や、パグやブルドッグのような鼻の短い犬種には口輪を使わないこと、猫はタオルで包み、空気穴のある暗い箱に入れることを挙げています。けがをした動物を動かすときは、頭、首、背骨をできるだけ動かさないよう、平らで硬い板や厚い段ボール、たたんだ毛布で体を支えるとしています[7]。

参考文献

  1. 東京都獣医師会「夜間の診療について」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  2. 川崎市獣医師会 夜間動物病院「ご案内・ご利用の留意点・アクセス」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  3. TRVA動物医療センター(一般社団法人 東京城南地域獣医療推進協会)「夜間救急」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  4. 獣医師法(昭和24年法律第186号)第19条(e-Gov法令検索) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  5. 日本獣医師会「小動物医療の指針」(平成14年12月12日制定、平成28年3月10日一部改正) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  6. Textor J. Introduction to Emergencies. Merck Veterinary Manual(MSD獣医マニュアル)飼い主向け版. 2025年12月 原典を開く(2026年9月28日確認)
  7. Textor J. What to Do in a Dog or Cat Emergency. Merck Veterinary Manual(MSD獣医マニュアル)飼い主向け版. 2025年12月 原典を開く(2026年9月28日確認)
  8. Textor J. Evaluation and Initial Treatment of Dog and Cat Emergencies. Merck Veterinary Manual(MSD獣医マニュアル)飼い主向け版. 2025年12月 原典を開く(2026年9月28日確認)
  9. 環境省「災害、あなたとペットは大丈夫?人とペットの災害対策ガイドライン〈一般飼い主編〉」平成30年(一般飼い主向けガイドライン) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  10. Brown SA. Noninfectious Diseases of the Urinary System of Cats. Merck Veterinary Manual(MSD獣医マニュアル)飼い主向け版. 2018年8月(2026年5月更新) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  11. Gwaltney-Brant SM. Food Hazards. Merck Veterinary Manual(MSD獣医マニュアル)飼い主向け版. 2020年10月(2026年5月更新) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  12. 日本中毒情報センター「受信報告Q&A」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  13. 日本中毒情報センター「イヌの中毒事故を防ぐために」 原典を開く(2026年9月28日確認)