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病院の選び方

かかりつけ動物病院の選び方 — 予防医療の指針と日本の診療の仕組みから

公開 2026年7月6日/更新 2026年9月28日 著者 動物病院ナビ編集部

かかりつけの動物病院は、健康なときの予防や健康診断から、病気の診療、専門の施設への紹介までの起点になる病院です。この記事では、病院を選ぶときに比べる材料になる事柄を、獣医学の国際的な指針、日本の法令、日本獣医師会の指針、各施設の公開情報にもとづいて整理します。病院に順位をつけるものではなく、病院ごとに違いが出る点と、それを何で確かめられるかをまとめています。施設の情報は2026年9月28日に各公式サイトで確かめたものです。

予防医療の指針が示す受診の頻度

世界小動物獣医師会(WSAVA)が2024年に公表した犬と猫のワクチン接種のガイドラインは、ワクチンが必要かどうかの見直しを、生涯にわたる健康管理の一部と位置づけています。そのうえで、定期的な健康診断(通常は年1回)を行い、年齢、品種、暮らし方、環境、旅行の予定などに合わせて予防の計画を立てるとしています。健康診断で話し合う内容には、ワクチンのほか、寄生虫の検査・治療・予防、ダニや蚊などが媒介する感染症と人と動物の共通感染症の予防、歯のケア、栄養、行動の評価と助言が含まれます[1]。同ガイドラインは、この受診を「ワクチンのための受診」ではなく「定期的な健康診断」として飼い主に伝えることを、獣医師に強く勧めています[1]。

受診の頻度の目安として、MSD獣医マニュアルの飼い主向け版は、成犬は少なくとも年1回、7〜8歳を超えた高齢犬は年2回以上、子犬は生後4か月まで3〜4週ごとを挙げています[2]。猫では、成猫は少なくとも年1回、8〜9歳を超えた高齢猫は年2回以上、子猫は生後6か月ごろまで3〜4週ごととしています[3]。米国動物病院協会(AAHA)と米国猫臨床医協会(AAFP)は、2021年に猫のライフステージガイドラインを公表した際の報道発表で、年齢の区分を子猫(1歳まで)、若年成猫(1〜6歳)、壮年成猫(7〜10歳)、高齢猫(10歳以上)とし、すべての猫に少なくとも年1回の十分な身体検査が必要で、高齢猫には少なくとも6か月ごとの健康診断を勧めると説明しています[4]。

日本の法令では、犬の飼い主に、犬の登録と、狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせることが義務づけられています[5]。これらの指針と法令からみると、健康な犬や猫でも年に1回以上、高齢になれば年2回以上、動物病院を受診する機会があることになります。

料金と説明の決まり

動物の診療は、いわゆる自由診療です。日本獣医師会の「小動物医療の指針」は、獣医師会や獣医師どうしで料金の協定を結んだり標準料金を設けたりすることは独占禁止法で認められていないとしており、料金は病院ごとに決まります[6]。

同じ指針は、獣医師が診療の前に説明する内容として、次の4点を挙げています[6]。

  • 病状:動物の具体的な病状と、かかっている病気、またはその疑いがある病気の説明
  • 検査と治療の方針:検査の内容と必要な理由、治療の選択肢、使う薬の効果・使い方・副作用
  • 予後:見込まれる経過、家庭で行うケア、すぐに獣医師へ連絡するべき異変
  • 診療料金:予測できる範囲での具体的な金額。見込みが立てにくい場合は、そのことを説明したうえでのおおよその金額

指針はさらに、料金の透明性を保つため、診療料金表(項目によっては目安の金額)を待合室に掲示することと、診療明細書を発行することを求めています[6]。

記録については、獣医師法が、診療した内容を診療簿に記載し、省令で定める期間(3年以上)保存することを獣医師に義務づけています。診療した獣医師は、診断書の交付を求められたとき、正当な理由がなければ拒めません[7]。日本獣医師会の指針は、飼い主から診療簿の開示を求められた場合は積極的に応じるよう努めること、転院の際に診療情報を求められた場合は適正に対応することも定めています[6]。

一次診療と二次診療

かかりつけの病院で対応が難しい病気は、専門的な検査や治療を行う施設へ紹介されることがあります。これを二次診療と呼びます。日本獣医師会の指針は、対応が難しい症例で飼い主の希望する医療を提供できない場合、獣医師は飼い主の希望を聞いたうえで、対応できるほかの獣医師や施設を紹介しなければならないとしています[6]。

大学の動物病院には、かかりつけの獣医師からの紹介を受けて診療する施設があり、受け付け方は施設によって異なります。東京大学附属動物医療センターは、かかりつけの獣医師から紹介と予約を受けた動物を診療する体制で、飼い主が紹介状を持って直接連絡しても予約は受け付けていません。診療科には行動診療科やエキゾチック科もあります[8]。日本獣医生命科学大学付属動物医療センターは、基本は紹介による予約としつつ、紹介状がない場合も飼い主からの申し込みを受け付けています。ただし、CT・MRI・放射線治療の検査と人工透析は、かかりつけの獣医師を通した申し込みに限っています[9]。このように、かかりつけの獣医師を通すことを前提にしている施設があります。

病院の情報と広告の決まり

獣医療法は、獣医師や動物病院の技能、療法、経歴について、専門科名や学位・称号などを除いて広告を制限しています[10]。農林水産省はこの制限を見直し、獣医療法施行規則の改正(2024年4月1日施行)と、獣医療広告ガイドラインの全部改正(2023年11月13日付け)を行いました[11]。見直しの主な内容は次のとおりです[12]。

  • これまで広告できた「内科」「犬猫専門」のような診療科名や、避妊・去勢手術、ワクチン接種、健康診断などに加え、診療行為全般を広告できる。その場合は、問い合わせ先、通常必要とされる診療内容、費用、主なリスクや副作用を併せて示す(以前は費用の広告は認められていなかった)
  • 飼い主の主観にもとづく治療内容や効果の体験談、誤解を招くおそれのある治療前後の写真は、広告に使えない
  • 動物病院のウェブサイトも、来院を誘う意図があり、病院が特定でき、一般の人が見られる状態であれば、広告の規制の対象になりうる
  • 農林水産大臣が指定する者の仕組みで認められた獣医師の専門性(認定医・専門医)を広告できる

専門性の認定要件を確かめる機関として、2024年7月24日の農林水産省告示で「日本獣医師会認定・専門獣医師協議会」が指定されました[11][13]。協議会は2025年3月31日から、認定・専門獣医師の登録情報をウェブサイトに掲載しています[13]。2026年9月28日時点では、動物臨床医学会と日本動物病院協会の「獣医総合臨床認定医」、日本獣医麻酔外科学会の「日本小動物外科専門医」、日本獣医がん学会の「獣医腫瘍科認定医」、日本獣医循環器学会の「獣医循環器認定医」、日本獣医皮膚科学会の認定医、日本獣医動物行動学会の「獣医行動診療科認定医」、日本獣医画像診断学会の「獣医画像診断認定医」など、10団体の18資格が載っていました[14]。病院のサイトにある認定医・専門医の表示は、この登録情報と照らし合わせることができます。

時間外の対応

獣医師法は、診療を業務とする獣医師は、診療を求められたときに正当な理由がなければ拒んではならないと定めています[7]。日本獣医師会の指針は、分娩の前後や手術の後など緊急の対応が必要になると予測される場合、予測される事態とその対処法、獣医師への連絡方法、診療できる時間などをあらかじめ飼い主に伝えておくよう求めています[6]。

夜間の受け皿は地域によって異なります。東京都獣医師会は、会員の病院による当番制の夜間診療を2018年3月31日に終え、現在は常設の夜間診療対応病院として6施設を案内しています。あわせて、来院前に必ず電話すること、予防注射など急を要さない診療は受け付けないこと、施設によって診療できない動物種があることを注意点に挙げています[15]。夜間救急の仕組みは「夜間・休日の急病に備える」で扱っています。

動物の負担を減らす取り組み

WSAVAのガイドラインは、健康診断の前や最中の体験が動物、飼い主、病院のスタッフにとってよいものになるよう、獣医師が研修を受けることを勧めており、例として「Fear Free(フィアフリー)」と「Cat Friendly Certificate(キャットフレンドリー認定)」の研修を挙げています[1]。猫の診療環境については、国際的な猫の福祉団体International Cat Care(iCatCare)が「キャット・フレンドリー・クリニック」の認定を行っており、2012年以降、50か国以上で4,000を超える動物病院が認定を受けたとしています[16]。

病院ごとに違いが出る項目

ここまでの内容から、病院ごとに違いが出て、公開情報や問い合わせで確かめられる項目をまとめます。

  • 診療する動物:「犬猫専門」のような診療科名は広告できる事項です[12]。夜間救急でも、施設によって診療できない動物種があります[15]。
  • 健康診断と予防の計画:WSAVAは、年齢や生活環境に合わせて個別に計画を立てるとしています[1]。
  • 費用の説明:事前の見積もりの示し方、料金表の掲示、診療明細書の発行[6]。
  • 時間外の連絡:時間外の連絡方法と、案内している夜間救急の施設[6][15]。
  • 紹介先:紹介している二次診療の施設と、その申し込みの手順[8][9]。
  • 専門性の表示:認定医・専門医の表示が登録情報と一致するか[14]。
  • ペット保険の窓口精算:仕組みと対応の状況は「ペット保険と窓口精算の基礎」にまとめています。

参考文献

  1. Squires RA, Crawford C, Marcondes M, Whitley N. 2024 guidelines for the vaccination of dogs and cats – compiled by the Vaccination Guidelines Group (VGG) of the World Small Animal Veterinary Association (WSAVA). J Small Anim Pract. 2024;65(5):277-316. doi:10.1111/jsap.13718 原典を開く(2026年9月28日確認)
  2. Antinoff N. Routine Health Care of Dogs. Merck Veterinary Manual(MSD獣医マニュアル)飼い主向け版. 2025年7月 原典を開く(2026年9月28日確認)
  3. Roman N. Routine Health Care of Cats. Merck Veterinary Manual(MSD獣医マニュアル)飼い主向け版. 2025年8月 原典を開く(2026年9月28日確認)
  4. American Animal Hospital Association, American Association of Feline Practitioners. AAHA and AAFP Release Updated Feline Life Stage Guidelines to the Veterinary Community(報道発表). 2021年3月2日 原典を開く(2026年9月28日確認)
  5. 狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)第4条・第5条(e-Gov法令検索) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  6. 日本獣医師会「小動物医療の指針」(平成14年12月12日制定、平成28年3月10日一部改正) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  7. 獣医師法(昭和24年法律第186号)第19条・第21条(e-Gov法令検索) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  8. 東京大学大学院農学生命科学研究科附属動物医療センター「ご予約から診療の流れ」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  9. 日本獣医生命科学大学付属動物医療センター「受診の流れ(飼い主様)」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  10. 獣医療法(平成4年法律第46号)第17条(e-Gov法令検索) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  11. 農林水産省「法律規則」獣医療広告の制限(獣医療法施行規則の改正、獣医療広告ガイドラインの全部改正、農林水産大臣の指定する者の告示) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  12. 農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課「獣医療広告制限の見直しについて」令和5年12月 原典を開く(2026年9月28日確認)
  13. 日本獣医師会認定・専門獣医師協議会「新着NEWS」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  14. 日本獣医師会認定・専門獣医師協議会「認定・専門獣医師の登録情報」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  15. 東京都獣医師会「夜間の診療について」 原典を開く(2026年9月28日確認)
  16. International Cat Care「Cat Friendly Clinic」 原典を開く(2026年9月28日確認)