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症状と受診の目安

猫が吐くときに考えられること — 回数・中身・ほかの症状の見方

公開 2026年7月6日/更新 2026年9月28日 著者 動物病院ナビ編集部

嘔吐は、胃や小腸の上部にある食べ物や液体を、口から勢いよく出すことです [1]。猫は毛玉を吐くことがあり、「猫はよく吐く」と言われることもありますが、嘔吐の原因には、異物や中毒、慢性の腸の病気、甲状腺や腎臓の病気なども含まれます [1]。この記事では、獣医学の資料をもとに、考えられる原因、様子の見方、急いで受診したいサイン、動物病院での検査と治療の流れをまとめます。

嘔吐と吐出(としゅつ)の違い

嘔吐は、おなかの筋肉が縮む力を伴う動きです。これに対して、食道から食べ物が戻ってくる吐出は力を伴わない受け身の動きで、出てきたものは消化されておらず、食道の形を映した筒状のことがあります [1]。どちらなのかは原因を考える手がかりになるため、吐いたときの様子も見ておきたい点です。

考えられる主な原因

  • 毛玉: 猫は毛づくろいで抜けた毛を飲み込み、胃の中で毛が固まった毛玉を吐くことがよくあります。重い場合は手術で取り除く必要があることもあります [1]。
  • 消化器やそれ以外の病気: 消化器の病気のほか、腎臓や肝臓の病気、膵炎、神経の病気、毒物、寄生虫、感染症、炎症、薬、異物、食物アレルギー、腫瘍などが原因になります [1]。
  • ひも状の異物: 糸や毛糸、布などの細長いものは、舌の付け根に引っかかったまま腸まで伸びると、腸の動きで腸が切れるように傷つき、穴があいておなかの中に感染が広がることがあります [2]。
  • 慢性の腸の病気: 嘔吐、下痢、食欲不振などが3週間を超えて続く状態は「慢性腸症」と呼ばれます [3]。猫の炎症性腸疾患では、症状が長く続き、よくなったり悪くなったりを繰り返すことがあり、嘔吐、下痢、食欲の変化、体重減少がみられます [2]。リンパ球形質細胞性腸炎の猫を調べた研究では、体重減少、ときどきだった嘔吐が毎日の嘔吐へと増えていく経過、下痢、食欲不振が多くみられました [3]。慢性腸症と、消化管のリンパ腫(がんの一種)を見分けるのは難しく、連続した病気だとする考えもあります [3]。
  • 中高齢の猫に多い病気: 甲状腺機能亢進症は中高齢の猫に多く、体重減少、食欲の増加、興奮しやすさ、多飲多尿、嘔吐、下痢などがみられます [4]。慢性腎臓病は5〜6歳ごろから増え、高齢の猫の最大35%にみられるとされ、進むと食欲不振、体重減少、嘔吐などが現れます [5]。
  • 中毒: ユリは、花、葉、花粉、花瓶の水のどれを少量口にしても、重い腎臓の障害を起こすことがあります [5]。チョコレートやタマネギなどのネギ類も、猫に害を及ぼすことがあります [6]。

様子の見方

MSD獣医マニュアル(Merck Veterinary Manual)によると、短い期間(1〜2日未満)のときどきの嘔吐で、ほかに症状がない場合は、症状を和らげる治療だけで済むことがあります。一方、長く続く嘔吐、1日に1〜2回より多い嘔吐、血が混じる、おなかを痛がる、元気がない、脱水、衰弱、発熱、体重減少などを伴う嘔吐は、詳しい検査が必要とされています [1]。

家では、次の点を記録しておくと、受診したときに伝えやすくなります。WSAVAのガイドラインも、食べた量と食欲、体重、便や嘔吐などの消化器の症状、全体の様子や行動を、飼い主が家で見ておく項目に挙げています [7]。

  • 吐いた日時と回数、食事との時間の関係
  • 吐いたものの中身と色(毛玉、フード、液体、血など)。片づける前に写真に残す
  • 食欲、水を飲む量、便と尿の様子、元気
  • 体重の変化
  • ひもやおもちゃ、植物、人の食べ物などを口にした心当たり

急いで受診したいサイン

次のような場合は、命に関わる病気や中毒のサインのことがあります。

  • 1日に何度も吐く、吐いたものに血が混じる、おなかを痛がる、ぐったりしている、脱水している、熱がある [1]。
  • 糸やひも、布などを飲み込んだ可能性がある [2]。
  • ユリの花や葉をかじった、花粉をなめた、花瓶の水を飲んだ可能性がある [5]。
  • 吐くうえに食べない状態が続いている。猫の肝臓病で最も多い肝リピドーシス(肝臓に脂肪がたまる病気)は、数日から数週間の食欲不振と関連して起こり、とくに太った猫に多いとされています。食欲不振による大幅な体重減少(体重の25%を超えることもあります)、嘔吐、元気がない、下痢などがみられ、黄疸(白目や歯ぐきが黄色くなる)やよだれがみられることもあります [8]。
  • オス猫が吐いていて、トイレで何度も力んでいる。尿道が詰まる尿道閉塞でも、嘔吐や脱水、ひどくぐったりするといった症状がみられます [9]。見分け方は猫が何度もトイレに行くときにまとめています。

動物病院での検査と治療の流れ

検査は、血液検査、便の検査、尿検査、おなかのX線検査や超音波検査などから選ばれます [1]。中高齢の猫では、血液中の甲状腺ホルモンの量も調べられます [4]。慢性の嘔吐では、アレルギーを起こしにくい食事(新しい種類のたんぱく質や、分解したたんぱく質の食事)を少なくとも2週間試し、治療に反応しない場合は、内視鏡や手術で腸の組織を採って調べます [3]。

治療は、原因の治療が中心です。長く続く嘔吐や重い嘔吐では、脱水や塩分(電解質)の乱れ、体の酸とアルカリのバランスの乱れも治療します [1]。肝リピドーシスでは、食欲を促す薬が効くことは多くないため、栄養チューブの設置が必要になり、高たんぱく・高カロリーでバランスのとれた食事を、はじめは少量ずつ回数を多くして与えます。早く診断されて治療を始められれば、見通しはよいとされています [8]。

予防と家でできること

  • こまめにブラッシングして抜け毛を取り除くと、飲み込む毛の量が減り、毛玉ができにくくなります。毛玉対策用のフードやおやつもあり、必要に応じて、飲み込んだ毛を消化管に通して出しやすくする薬(ミネラルオイルなど)が使われることもあります [1]。
  • 糸やひも、布などの細長いものは、腸を傷つける危険があるため、猫が口にできない場所にしまうことが大切です [2]。
  • ユリはごく少量でも腎臓の障害を起こすため、花瓶に生けたものも含めて、猫が近づける場所に置かないことが予防になります [5]。
  • チョコレートやネギ類を含む食べ物は、猫に与えてはいけないものとされています [6]。
  • 吐いた回数、食欲、体重を記録しておくと、変化に気づきやすくなります [7]。

まとめ

  • 嘔吐の原因は、毛玉のように日常的にみられるものから、異物、中毒、慢性の腸の病気、甲状腺や腎臓の病気まで幅広くあります。
  • 回数、吐いたものの中身、ほかの症状、続いている期間が、受診を判断する手がかりになります。
  • 毛玉であっても頻繁に吐く場合や、ここに挙げたサインがあるときは、かかりつけの動物病院に相談してください [1]。

参考文献

  1. Webb CB. Vomiting in Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  2. Defarges A, Blois S, Hall EJ, et al. Disorders of the Stomach and Intestines in Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  3. Collier A. Chronic Enteropathies in Small Animals. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  4. Peterson ME, Kritchevsky JE. Disorders of the Thyroid Gland in Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  5. Brown SA. Noninfectious Diseases of the Urinary System of Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  6. 環境省. 飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~(1-4 与えてはいけないもの、注意が必要なもの). 2018年(2021年更新). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  7. WSAVA Nutritional Assessment Guidelines Task Force Members (Freeman L, Becvarova I, Cave N, et al.). WSAVA Nutritional Assessment Guidelines. J Small Anim Pract. 2011;52(7):385-396.(日本語版「栄養評価ガイドライン」) 原典を開く(2026年9月28日確認)
  8. Center SA. Disorders of the Liver and Gallbladder in Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
  9. Van Vertloo L. Obstructive Uropathy in Dogs and Cats. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)