猫が吐くときに考えられること — 回数・中身・ほかの症状の見方
嘔吐は、胃や小腸の上部にある食べ物や液体を、口から勢いよく出すことです [1]。猫は毛玉を吐くことがあり、「猫はよく吐く」と言われることもありますが、嘔吐の原因には、異物や中毒、慢性の腸の病気、甲状腺や腎臓の病気なども含まれます [1]。この記事では、獣医学の資料をもとに、考えられる原因、様子の見方、急いで受診したいサイン、動物病院での検査と治療の流れをまとめます。
嘔吐と吐出(としゅつ)の違い
嘔吐は、おなかの筋肉が縮む力を伴う動きです。これに対して、食道から食べ物が戻ってくる吐出は力を伴わない受け身の動きで、出てきたものは消化されておらず、食道の形を映した筒状のことがあります [1]。どちらなのかは原因を考える手がかりになるため、吐いたときの様子も見ておきたい点です。
考えられる主な原因
- 毛玉: 猫は毛づくろいで抜けた毛を飲み込み、胃の中で毛が固まった毛玉を吐くことがよくあります。重い場合は手術で取り除く必要があることもあります [1]。
- 消化器やそれ以外の病気: 消化器の病気のほか、腎臓や肝臓の病気、膵炎、神経の病気、毒物、寄生虫、感染症、炎症、薬、異物、食物アレルギー、腫瘍などが原因になります [1]。
- ひも状の異物: 糸や毛糸、布などの細長いものは、舌の付け根に引っかかったまま腸まで伸びると、腸の動きで腸が切れるように傷つき、穴があいておなかの中に感染が広がることがあります [2]。
- 慢性の腸の病気: 嘔吐、下痢、食欲不振などが3週間を超えて続く状態は「慢性腸症」と呼ばれます [3]。猫の炎症性腸疾患では、症状が長く続き、よくなったり悪くなったりを繰り返すことがあり、嘔吐、下痢、食欲の変化、体重減少がみられます [2]。リンパ球形質細胞性腸炎の猫を調べた研究では、体重減少、ときどきだった嘔吐が毎日の嘔吐へと増えていく経過、下痢、食欲不振が多くみられました [3]。慢性腸症と、消化管のリンパ腫(がんの一種)を見分けるのは難しく、連続した病気だとする考えもあります [3]。
- 中高齢の猫に多い病気: 甲状腺機能亢進症は中高齢の猫に多く、体重減少、食欲の増加、興奮しやすさ、多飲多尿、嘔吐、下痢などがみられます [4]。慢性腎臓病は5〜6歳ごろから増え、高齢の猫の最大35%にみられるとされ、進むと食欲不振、体重減少、嘔吐などが現れます [5]。
- 中毒: ユリは、花、葉、花粉、花瓶の水のどれを少量口にしても、重い腎臓の障害を起こすことがあります [5]。チョコレートやタマネギなどのネギ類も、猫に害を及ぼすことがあります [6]。
様子の見方
MSD獣医マニュアル(Merck Veterinary Manual)によると、短い期間(1〜2日未満)のときどきの嘔吐で、ほかに症状がない場合は、症状を和らげる治療だけで済むことがあります。一方、長く続く嘔吐、1日に1〜2回より多い嘔吐、血が混じる、おなかを痛がる、元気がない、脱水、衰弱、発熱、体重減少などを伴う嘔吐は、詳しい検査が必要とされています [1]。
家では、次の点を記録しておくと、受診したときに伝えやすくなります。WSAVAのガイドラインも、食べた量と食欲、体重、便や嘔吐などの消化器の症状、全体の様子や行動を、飼い主が家で見ておく項目に挙げています [7]。
- 吐いた日時と回数、食事との時間の関係
- 吐いたものの中身と色(毛玉、フード、液体、血など)。片づける前に写真に残す
- 食欲、水を飲む量、便と尿の様子、元気
- 体重の変化
- ひもやおもちゃ、植物、人の食べ物などを口にした心当たり
急いで受診したいサイン
次のような場合は、命に関わる病気や中毒のサインのことがあります。
- 1日に何度も吐く、吐いたものに血が混じる、おなかを痛がる、ぐったりしている、脱水している、熱がある [1]。
- 糸やひも、布などを飲み込んだ可能性がある [2]。
- ユリの花や葉をかじった、花粉をなめた、花瓶の水を飲んだ可能性がある [5]。
- 吐くうえに食べない状態が続いている。猫の肝臓病で最も多い肝リピドーシス(肝臓に脂肪がたまる病気)は、数日から数週間の食欲不振と関連して起こり、とくに太った猫に多いとされています。食欲不振による大幅な体重減少(体重の25%を超えることもあります)、嘔吐、元気がない、下痢などがみられ、黄疸(白目や歯ぐきが黄色くなる)やよだれがみられることもあります [8]。
- オス猫が吐いていて、トイレで何度も力んでいる。尿道が詰まる尿道閉塞でも、嘔吐や脱水、ひどくぐったりするといった症状がみられます [9]。見分け方は猫が何度もトイレに行くときにまとめています。
動物病院での検査と治療の流れ
検査は、血液検査、便の検査、尿検査、おなかのX線検査や超音波検査などから選ばれます [1]。中高齢の猫では、血液中の甲状腺ホルモンの量も調べられます [4]。慢性の嘔吐では、アレルギーを起こしにくい食事(新しい種類のたんぱく質や、分解したたんぱく質の食事)を少なくとも2週間試し、治療に反応しない場合は、内視鏡や手術で腸の組織を採って調べます [3]。
治療は、原因の治療が中心です。長く続く嘔吐や重い嘔吐では、脱水や塩分(電解質)の乱れ、体の酸とアルカリのバランスの乱れも治療します [1]。肝リピドーシスでは、食欲を促す薬が効くことは多くないため、栄養チューブの設置が必要になり、高たんぱく・高カロリーでバランスのとれた食事を、はじめは少量ずつ回数を多くして与えます。早く診断されて治療を始められれば、見通しはよいとされています [8]。
予防と家でできること
- こまめにブラッシングして抜け毛を取り除くと、飲み込む毛の量が減り、毛玉ができにくくなります。毛玉対策用のフードやおやつもあり、必要に応じて、飲み込んだ毛を消化管に通して出しやすくする薬(ミネラルオイルなど)が使われることもあります [1]。
- 糸やひも、布などの細長いものは、腸を傷つける危険があるため、猫が口にできない場所にしまうことが大切です [2]。
- ユリはごく少量でも腎臓の障害を起こすため、花瓶に生けたものも含めて、猫が近づける場所に置かないことが予防になります [5]。
- チョコレートやネギ類を含む食べ物は、猫に与えてはいけないものとされています [6]。
- 吐いた回数、食欲、体重を記録しておくと、変化に気づきやすくなります [7]。
まとめ
- 嘔吐の原因は、毛玉のように日常的にみられるものから、異物、中毒、慢性の腸の病気、甲状腺や腎臓の病気まで幅広くあります。
- 回数、吐いたものの中身、ほかの症状、続いている期間が、受診を判断する手がかりになります。
- 毛玉であっても頻繁に吐く場合や、ここに挙げたサインがあるときは、かかりつけの動物病院に相談してください [1]。
参考文献
- Webb CB. Vomiting in Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
- Defarges A, Blois S, Hall EJ, et al. Disorders of the Stomach and Intestines in Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
- Collier A. Chronic Enteropathies in Small Animals. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
- Peterson ME, Kritchevsky JE. Disorders of the Thyroid Gland in Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
- Brown SA. Noninfectious Diseases of the Urinary System of Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
- 環境省. 飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~(1-4 与えてはいけないもの、注意が必要なもの). 2018年(2021年更新). 原典を開く(2026年9月28日確認)
- WSAVA Nutritional Assessment Guidelines Task Force Members (Freeman L, Becvarova I, Cave N, et al.). WSAVA Nutritional Assessment Guidelines. J Small Anim Pract. 2011;52(7):385-396.(日本語版「栄養評価ガイドライン」) 原典を開く(2026年9月28日確認)
- Center SA. Disorders of the Liver and Gallbladder in Cats. Merck Veterinary Manual(飼い主向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)
- Van Vertloo L. Obstructive Uropathy in Dogs and Cats. Merck Veterinary Manual(獣医師向け). 原典を開く(2026年9月28日確認)